「無料なのに、こんなに賢いAIが使えるなんて」。そう感じながらChatGPTを使っている皆さんに、知っておいてほしい調査結果が出ました。米国の調査報道メディア404 Mediaが2026年10月15日、ChatGPTの広告はあなたのメールアドレスや電話番号、そして今している会話の内容をもとに届けられると報じたのです。
報道は翌16日にGizmodoなど米国の大手メディアへ広がりました。10月20日にはプライバシーの専門家が新たな見方を示し、同じ日の夜(日本時間)には、OpenAIも利用者向けと広告主向けの公式ヘルプを相次いで更新しています。10月20日を過ぎても議論と動きが続いている、最新の話題です。
この記事では、404 Mediaの報道とOpenAI自身の公式ヘルプを照らし合わせ、ChatGPTの広告がどんな仕組みであなたに届くのかを解き明かします。日本の個人情報のルールから見た論点、ClaudeとGeminiの方針との比較、そしてあなたが今すぐ見直せる設定までまとめました。
- ChatGPTの広告は、日本では無料版とGoプランに表示されます。Plus以上の有料プランには表示されません。
- 広告を出す会社は、手持ちのメールアドレス・電話番号の名簿をOpenAIにアップロードし、ChatGPTのアカウントと照合して広告の届け先を絞れます。
- 広告は今の会話の内容にも合わせて選ばれます。広告のパーソナライズをオフにしても、この仕組みは続きます。
- OpenAIは、会話そのものを広告主に渡さないと説明しています。広告主に届くのは表示回数などの集計だけです。
- 気になる人は、パーソナライズのオフ・広告データの削除・一時チャットの3つで、広告に使われる情報を絞れます。
01404 Mediaが暴いた「ChatGPT広告」の裏側
404 Mediaは、テクノロジーと監視の問題を追いかける米国の独立系メディアです。今回の調査で同社は、自ら広告主になってChatGPTに広告を出しました。広告を出す会社が使う管理画面に実際に入り、どんな条件で広告の届け先を決められるのかを、内側から確かめたのです。

米国のテクノロジーメディアGizmodoによると、404 Mediaは2つの広告キャンペーンを出稿しました。分かったことは大きく3つです。
広告の世界では、名簿をもとに広告を届ける方法は以前から使われています。404 Mediaが問題にしたのは、その仕組みが「AIに打ち明けた会話」と同じ画面の中で動いている点です。検索窓に打つ短い言葉と違い、ChatGPTには悩みや予定、仕事の中身まで長い文章で書き込む人が多いからです。
02そもそもChatGPTの広告は、いつから誰に出ているのか
ChatGPTの広告は、米国で2026年2月9日にテストが始まりました。日本については、6月に国内の大手広告会社によるパイロットの開始が報じられ、OpenAIは公式ページの8月11日の更新で、日本を含む5か国で提供を始めたと明記しています。

広告が表示されるかどうかは、使っているプランで決まります。OpenAIの公式ヘルプをもとに整理しました。
| プラン・状態 | 広告 | 補足 |
|---|---|---|
| 無料版 | 表示される | 広告なしに切り替えることもできます。その場合はメッセージの上限が下がり、画像生成やdeep researchなどが使えなくなります |
| ChatGPT Go | 表示される | 有料ですが広告の対象です |
| Plus・Pro | 表示されない | 広告なしのプランです |
| Business・Enterprise・Edu | 表示されない | 会社・学校向けのプランです |
| 18歳未満と判定されたアカウント | 表示されない | 申告年齢や利用の傾向から年齢を推定します |
| 一時チャット | 表示されない | メモリも使われません |
| 健康・心の悩み・政治の話題 | 表示されない | こうした話題の近くには広告を出さない方針です |
広告は、ChatGPTの答えの下に「広告」と分かる形で1つ表示されます。画像を生成している間に、複数の画像を使った広告を出すテストも進んでいます。OpenAIは、広告が答えの中身を左右することはないと説明しています。
03狙い撃ちの仕組み① あなたの電話番号とメールアドレス
1つ目の仕組みは「カスタムオーディエンス」と呼ばれる機能です。広告を出す会社は、自社の顧客や見込み客の名簿をファイルにまとめてOpenAIの広告管理画面にアップロードします。OpenAIはその名簿をChatGPTのアカウントと照合し、一致した人を広告の届け先にできます。

公式ヘルプに書かれた主な条件は次のとおりです。
| 項目 | OpenAIの公式ヘルプの内容 |
|---|---|
| 使える情報 | メールアドレス、電話番号、SHA-256という方式で変換(ハッシュ化)したメールアドレスと電話番号、Android端末のGoogle広告ID |
| 使い方 | 名簿の人だけに届ける、名簿の人を外す、名簿の人には高い広告料を払って優先して届ける、の3通り |
| 人数の条件 | 届け先を絞る使い方には25,000人以上の一致が必要。10万人以上を推奨。外す使い方は少人数でも可 |
| 個人の特定 | 一致した人を1人ずつ見ることや、特定の人を選ぶことはできない |
| 名簿の扱い | 処理のあと削除。通常は遅くともアップロードから24時間以内 |
| 名簿の条件 | 広告に使う権利がある自社の名簿だけ。データ業者から買った名簿は禁止(開発者向けページ) |
| 欧州 | 欧州経済領域(EEA)とスイスを対象にする広告では使わないよう案内 |
ここで押さえておきたいのは、データが流れる向きです。OpenAIは利用者のデータを広告主に売らないと約束しています。データは逆向きに流れ、広告主がすでに持っているあなたの連絡先が、OpenAIに持ち込まれて照合されるのです。通販サイトや会員登録で渡したメールアドレスが、ChatGPTの登録に使ったものと同じなら、照合の対象になり得ます。
ハッシュ化とは、メールアドレスなどを元に戻しにくい文字列に変える処理です。ただし、同じメールアドレスからは必ず同じ文字列が作られるため、照合にはそのまま使えます。Gizmodoは、OpenAIが生のまま受け取った連絡先を自社でハッシュ化しているかどうかについて、OpenAIから答えを得られなかったと伝えています。
04狙い撃ちの仕組み② あなたが今している会話
2つ目の仕組みは、会話の中身に合わせて広告を選ぶ方法です。OpenAIはこれを「コンテキストヒント」と呼んでいます。広告を出す会社は、自社の商品が「誰の」「どんな場面で」役に立つかを文章で書き込みます。ChatGPTの広告の仕組みは、その説明と今の会話を見比べて、合いそうな広告を選びます。
404 Mediaは、自社の広告に「ChatGPTの会話のプライバシー」「AIとテクノロジー」といった話題をヒントとして設定しました。OpenAIは、ヒントを会話と広告を結びつける「手がかり」として使い、特定の言葉にそのまま反応させる条件には使わないと説明しています。

公式ヘルプによると、広告選びに使われる情報は設定によって変わります。
| 使われる情報 | パーソナライズ オン | パーソナライズ オフ |
|---|---|---|
| 今の会話の内容 | 使われる | 使われる |
| おおまかな位置と言語 | 使われる | 使われる |
| 過去のチャットとメモリ | 使われる | 使われない |
| 広告への反応(クリック・非表示) | 使われる | 使われない |
| 広告主が設定した名簿・ヒント | 使われる | OpenAIはこの組み合わせを明記していません |
表の最後の行は、今回の報道で最も議論になった点です。Gizmodoは、パーソナライズのオフが外すのは「過去のチャット・アクティビティ・好み」で、名簿による狙い撃ちまで止まるとは限らないと指摘しました。OpenAIの公式ヘルプも、オフにした場合に外れる情報として過去のチャット・広告履歴・話題を挙げるだけで、名簿との関係には触れていません。
05OpenAIの説明と、まだ答えていないこと
OpenAIは、広告について5つの原則を掲げています。答えの独立性、会話のプライバシー、利用者による選択と管理などです。公式ヘルプは、広告主があなたのチャット・チャット履歴・メモリ・名前・メールアドレス・正確な位置情報・IPアドレスを受け取ることはないと明記しています。
| OpenAIが説明していること | 報道でも答えが出ていないこと |
|---|---|
| 会話を広告主に渡さない。利用者のデータを売らない | 生のまま受け取った連絡先を、OpenAIの側でハッシュ化しているか |
| 広告主が受け取るのは表示回数・クリック数などの集計だけ | パーソナライズをオフにした人にも、名簿による狙い撃ちが働くか |
| 名簿は2.5万人以上の一致が必要で、1人を狙うことはできない | 名簿に入っていることで、広告の出やすさがどれだけ変わるか |
| 名簿は処理後、通常24時間以内に削除 | 照合した結果の記録を、OpenAIがどれだけの期間持つか |
| 広告データは削除でき、最長30日で完全に消える | 今後、広告主に渡す測定データをどこまで広げるか |
公式ヘルプには「今後、さらなる測定結果の分析を進めていく可能性があります」という一文もあります。広告の効果をより細かく知りたい広告主の要望と、会話を守るという約束をどう両立させるのかは、これからの注目点です。
一方で、プライバシーの専門家からは別の見方も出ています。リトアニアのセキュリティメディアCybernewsの編集長は、広告が表示されることで、ChatGPTが営利の製品だと利用者が意識し、打ち明ける内容に慎重になるきっかけになると述べています。
06【実演】ChatGPTの広告設定はどこにある? 初期状態はすべてオン
AQUAでは2026年10月21日、ログインしない状態のChatGPT(日本語表示)で設定画面を開きました。[データコントロール]の欄に、広告に関わる項目が並んでいます。

注目したいのは2つです。1つ目は、4つの項目がすべて最初からオンになっていたこと。何も触らなければ、過去の会話や好みも広告選びに使われる状態から始まります。2つ目は「広告をパーソナライズ」の説明文です。画面には、許可しない場合でも現在のチャットに基づく広告が表示されることがあると、はっきり書かれています。
あわせて、ログインしない状態で、ノートパソコン選びと沖縄のホテル選びの質問を1回ずつ送りました。この2回では、答えの下に広告は表示されませんでした。広告は対象の利用者に段階的に広げられているため、表示されるかどうかは人や時期によって変わります。
ログインして使っている人の設定手順
無料版とGoプランの人は、[設定]→[広告の管理]から次の操作ができます。

無料版のまま[広告の管理]→[広告なしにプランを変更]を選ぶと、広告は消えます。そのかわりメッセージの上限が下がり、画像生成やdeep researchなどが使えなくなります。機能を減らさずに広告をなくすには、PlusかProへの切り替えが必要です。Goプランの人が広告なしにするには、無料版に戻すか、Plus以上に上げます。
07日本の個人情報のルールから見ると
名簿を使った広告は、日本の個人情報保護法とも関わります。個人情報保護委員会は、公式Q&A(Q7-41)で、まさにこの型の事例を取り上げています。
会社が顧客のメールアドレスをSNSの運営会社に渡し、運営会社が自社の利用者のメールアドレスと照合して広告を出す。この取り扱いは、業務を任せる「委託」の範囲を超えるとされています。行う場合は、運営会社への「第三者提供」として原則本人の同意を得るか、運営会社の側で本人の同意を得るなどの対応が必要とされています。
このQ&AはSNSの例で書かれていますが、メールアドレスを照合して広告を出すという点で、ChatGPTのカスタムオーディエンスと同じ型です。日本の会社がChatGPT広告で名簿を使うときは、自社のプライバシーポリシーで広告への利用を示し、必要な同意を得ておくことが前提になります。最終的な判断は各社の法務の確認に委ねられます。OpenAI自身も、名簿をアップロードする前に、必要な通知・同意・法的な根拠を確かめ、プライバシーや法務の承認を得るよう広告主に求めています。
| 地域 | 個人に合わせた広告 | 名簿による狙い撃ち |
|---|---|---|
| 日本 | 利用できる(設定でオフにできる) | 利用できる。広告主の側で同意の取得などが前提 |
| EEA・スイス | 当初は提供されていない | 使わないよう公式ヘルプが案内 |
| 米国 | 2026年2月から利用できる | 利用できる |
欧州で個人に合わせた広告が止まっているのは、欧州の個人データのルール(GDPR)が、こうした利用に厳しい条件を課しているためと考えられます。同じChatGPTでも、住んでいる地域によって、あなたのデータの扱われ方が変わるのです。
個人情報の守り方については、個人情報保護委員会の新しい漏えい対策を解説した記事でも詳しく紹介しています。
08ClaudeとGeminiは、広告をどうしているか
ChatGPTと並ぶ大手のAIは、広告にどう向き合っているのでしょうか。各社が公式に示している方針を比べました。
| 項目 | ChatGPT(OpenAI) | Claude(Anthropic) | Gemini(Google) |
|---|---|---|---|
| チャット画面の広告 | 無料版・Goに表示 | 表示しないと約束 | Geminiアプリには表示なし |
| 方針の出どころ | 公式ヘルプ・広告の原則 | 2026年2月4日の公式声明 | 2025年12月、Googleの広告担当副社長の発言 |
| 収益の中心 | 有料プラン+広告 | 企業契約と有料プラン | 検索広告など |
| 注意点 | 名簿と会話で広告を選ぶ | 方針を見直す場合は理由を説明するとしている | 検索の「AIモード」には広告がある |
Anthropicは「Claude is a space to think(Claudeは考えるための場所)」という声明で、Claudeを広告のない場にすると宣言しました。AIとの会話では個人的な事情まで共有されることが多く、そこに広告を置くと、AIの提案が利用者のためなのか商売のためなのか見分けにくくなる、というのが理由です。
Googleは、2026年にGeminiアプリへ広告を入れるという報道に対し、広告担当副社長が「Geminiアプリに広告はなく、今のところ変える予定もない」と否定しました。一方で、Google検索のAIモードでは広告の表示が進んでいます。3社の基本の違いは、ChatGPT・Claude・Geminiの徹底比較でもまとめています。
09AIのプロとしての考察:本当の「代金」は何か
AIを仕事で毎日使う立場から見ると、今回の件の核心は、無料のAIの代金が「注意」と「文脈」で支払われ始めたことにあります。検索広告は、あなたが打った数語のキーワードに広告を合わせてきました。ChatGPTの広告は、悩みの背景や予算、家族の予定まで含んだ会話の流れに合わせて選ばれます。広告にとって、これほど精度の高い手がかりはありません。
OpenAIが会話を広告主に渡さないと約束している点は、正しく評価すべきです。名簿の最少人数や24時間での削除も、悪用を防ぐための工夫です。ただ、守られているのは「広告主に会話が見えない」ことで、「あなたの会話が広告選びに使われる」ことは仕組みの前提になっています。この2つを分けて理解しておくと、必要以上に怖がることも、油断することもなくなります。
AQUAがおすすめする線の引き方は、次の3つです。
もう1つ、名簿による照合は、広告主が持つ連絡先とChatGPTの登録情報が一致して初めて働きます。買い物や会員登録に使うメールアドレスと、AIサービスに登録するメールアドレスを分けておくのも、照合されにくくする実用的な工夫です。AIと話す時間は、これからさらに長くなります。だからこそ、何をAIに話すかを、あなた自身が選べる状態にしておくことが大切です。
AIとの付き合い方の新しい常識は、Character.AIの破綻とOpenAIの取り組みを扱った記事でも考察しています。ChatGPTに個人の画面を読ませる機能の注意点は、ChatGPTのChrome拡張の検証記事をご覧ください。
10よくある質問
11まとめ
- ChatGPTの広告は、日本では2026年夏から無料版とGoプランに表示されています(OpenAIの公式発表は8月11日)。
- 広告主はメールアドレス・電話番号の名簿をOpenAIで照合し、2.5万人以上の単位で広告の届け先を絞れます。
- 広告は今の会話にも合わせて選ばれ、パーソナライズをオフにしてもこの部分は続きます。
- ログインしない状態の設定画面では、広告のパーソナライズなど4項目が最初からオンでした。
- 重い相談は一時チャット、設定の見直し、仕事は広告のないプラン。この3つで、AIに渡す情報をあなたが選べます。
無料で使えるAIは、多くの人の暮らしと仕事を助けています。その代金として何を差し出しているのかを知ったうえで使えば、ChatGPTはこれからも頼れる相棒であり続けます。まずは数分だけ時間をとって、あなたのChatGPTの[設定]を開いてみてください。
参考リンク
- 404 Media「How ChatGPT Targets Ads To You Based On Your Prompts, Phone Number, and Email」(2026年10月15日、英語)
- Gizmodo「Here’s How ChatGPT Is Targeting You With Ads」(2026年10月16日、英語)
- OpenAI Help Center「ChatGPT での広告」
- OpenAI Help Center「キャンペーン向けカスタムオーディエンスの設定」
- OpenAI Help Center「ChatGPT 広告のコンテキストヒント作成」
- OpenAI for Developers「Custom audiences」(英語)
- OpenAI「ChatGPT での広告のテスト」
- Impress Watch「ChatGPT、日本で広告表示開始」(2026年6月19日)
- 個人情報保護委員会「Q&A 7-41」
- Anthropic「Claude is a space to think」(2026年2月4日、英語)
- Search Engine Land「Google denies ads are coming to Gemini in 2026」(英語)
- The IT Nerd「Could ChatGPT’s targeted ads actually be good for user privacy?」(2026年10月20日、英語)