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RAG vs ファインチューニング徹底比較|どちらを選ぶべき?違い・コスト・使い分けを解説

2025年12月12日 9分で読める AQUA合同会社
RAG vs ファインチューニング徹底比較|どちらを選ぶべき?違い・コスト・使い分けを解説

多くのビジネスユースケースでは、RAGがファインチューニングより最適解です。これはMicrosoftの検証でも確認されている事実です。

しかし、だからといってファインチューニングが不要というわけではありません。医療用語や法律文書など、特定ドメインの語彙を完璧に理解させたい場合——ファインチューニングが圧倒的に有利なケースも確かに存在します。

本記事では、RAGとファインチューニングの違いを徹底比較し、あなたの課題に最適な手法を選ぶための判断基準を解説します。

RAGとファインチューニングの基本的な違い

まずは、両者の仕組みの違いを理解しましょう。

RAG(検索拡張生成)とは

RAG(Retrieval-Augmented Generation)は、LLMを外部データベースに接続して拡張する手法です。

RAGの仕組み

  1. ユーザーが質問を入力
  2. 質問に関連する情報を外部データベースから検索
  3. 検索結果をプロンプトに追加
  4. LLMが検索結果を参照して回答を生成

RAGの最大の特徴は、LLM自体の追加学習が不要なこと。データベースを更新するだけで、常に最新の情報を反映した回答が可能になります。

ファインチューニングとは

ファインチューニングは、既存のAIモデルに追加学習を行い、モデル内部のパラメータを更新する手法です。

ファインチューニングの仕組み

  1. 専門分野のデータセットを用意
  2. 既存モデルに追加学習を実施
  3. モデルのパラメータが更新される
  4. 特定タスクに特化したモデルが完成

ファインチューニングは、知識をモデルに「焼き付ける」ようなもの。一度学習すれば検索ステップなしで即座に回答できますが、知識を更新するには再学習が必要です。

一言で表す違い

RAG = LLMに「最新の資料を渡して参照させる」

ファインチューニング = LLMに「専門知識を暗記させる」

RAG vs ファインチューニング 徹底比較表

両者の違いを、様々な観点から比較します。

比較項目 RAG ファインチューニング
知識の更新 ✅ DBを更新するだけ ❌ 再学習が必要
初期コスト ✅ 低〜中 ❌ 高(GPU・人材・時間)
運用コスト DB維持費+API費用 再学習時にコスト発生
導入スピード ✅ 数週間〜 ❌ 数ヶ月〜
推論速度 検索ステップあり(やや遅い) ✅ 高速(検索不要)
ハルシネーション ✅ 出典明示で抑制可能 ❌ 抑制しにくい
専門用語対応 △ 限界あり ✅ 得意
文体・トーン統一 △ プロンプトで調整 ✅ 一貫性が高い
必要スキル 中程度 高度(ML専門知識)

RAGが向いているケース

以下のような課題を解決したい場合は、RAGが最適です。

1. 最新情報を常に反映したい

  • 日次・週次で情報が更新される
  • 法改正、製品仕様変更への即時対応が必要
  • ニュースや市場動向を反映した回答が求められる
💡 例:社内規定が頻繁に更新される場合、ファインチューニングでは毎回再学習が必要。RAGならデータベースを更新するだけで済みます。

2. 社内ドキュメントを検索・活用したい

  • マニュアル、FAQ、議事録などの検索
  • ナレッジベースからの情報抽出
  • 過去事例の参照

3. 回答の根拠を明示したい

  • 「この回答は〇〇のドキュメントに基づいています」と出典を示せる
  • ハルシネーション(事実と異なる回答)のリスクを軽減
  • コンプライアンス・監査対応が必要な業界に最適

4. 複数ドメインに対応したい

  • 同じモデルで、参照するデータベースを切り替えるだけで複数領域に対応
  • ファインチューニングの場合、ドメインごとに別モデルが必要になることも

5. 迅速に導入したい

  • PoC(概念実証)を短期間で実施したい
  • まずは小規模で試してから拡大したい

ファインチューニングが向いているケース

一方、以下のケースではファインチューニングが有利です。

1. 専門用語・業界独自の言い回しが多い

  • 医療、法律、金融などの専門分野
  • 社内独自の略語・用語が頻出する
  • 一般的なLLMでは理解できない専門的な文脈
💡 例:放射線科のレポート作成では、専門用語だけでなく、標準的なフレーズや体系的なアプローチも学習させる必要があります。これはRAGだけでは難しい領域です。

2. 一貫した文体・トーンが必要

  • ブランドボイスの統一
  • 特定のフォーマットでの出力が必須
  • 丁寧語、カジュアル、専門的など、明確なスタイル要件がある

3. 推論速度が最優先

  • リアルタイム応答が求められる
  • 検索ステップによる遅延が許容できない
  • 大量のリクエストを高速処理する必要がある

4. 知識が頻繁に変わらない

  • 学習させる知識が長期間有効
  • 再学習の頻度が低くて済む

5. プロンプトを短縮してコスト削減したい

  • ファインチューニングにより、プロンプトサイズを最大90%削減できる事例も
  • 毎回長いプロンプトを送る必要がなくなり、API費用を削減

コスト比較:どちらが安い?

RAGのコスト構造

項目 費用目安
初期構築費用 100万〜500万円
ベクトルDB運用費 月額5万〜20万円
API利用費 利用量に応じて変動
データ更新作業 月額5万〜10万円

ファインチューニングのコスト構造

項目 費用目安
データセット準備 50万〜200万円
学習コスト(GPU) 10万トークン×10エポック ≈ 数千円〜
専門人材(エンジニア) 月額50万〜100万円
再学習コスト 更新のたびに発生
⚠️ 注意:ファインチューニングはAPI費用自体は安価ですが、データ準備と専門人材のコストが見落とされがちです。高品質な学習データの作成には相当な工数がかかります。

結論:多くの場合、RAGの方がコスト効率が良い

  • 導入スピードが速い(機会損失が少ない)
  • 専門人材への依存度が低い
  • 知識更新のたびに再学習コストがかからない

ハイブリッドアプローチ(RAFT)という選択肢

実は、RAGとファインチューニングは排他的な選択ではありません。両者を組み合わせた「ハイブリッドアプローチ」が、最強の選択肢となるケースがあります。

RAFT(Retrieval-Augmented Fine-Tuning)とは

RAFTの仕組み

  1. 専門ドメインのデータでモデルをファインチューニング(用語・文体を学習)
  2. ファインチューニング済みモデルをRAGアーキテクチャにデプロイ
  3. 専門知識+最新情報の両方を活用した回答が可能に

ハイブリッドが有効なケース

  • 専門用語の理解が必要 かつ 最新情報も参照したい
  • ブランドボイスを統一しつつ、外部データも活用したい
  • 高度な専門性と情報の鮮度の両方が求められる

導入ステップ例

  1. まずRAGで導入:低コスト・短期間で効果を検証
  2. 課題を特定:専門用語の理解不足、文体の不統一などを洗い出す
  3. 部分的にファインチューニング:課題のある領域のみ追加学習
  4. ハイブリッド構成で運用:両者のメリットを享受

技術選定フローチャート

どちらを選ぶべきか迷ったら、以下のフローで判断してください。

Step 1: 情報の更新頻度は?

頻繁に更新される:RAG一択

ほとんど変わらない:次のステップへ

Step 2: 専門用語・業界独自の表現が多い?

はい:ファインチューニングを検討

いいえ:RAGで十分

Step 3: 回答の根拠を明示する必要がある?

はい:RAG(出典明示機能)

いいえ:どちらでも可

Step 4: 導入スピードは重要?

はい:RAG(短期間で構築可能)

時間をかけられる:ファインチューニングも選択肢

Step 5: 高度な専門性+最新情報の両方が必要?

はい:ハイブリッドアプローチ(RAFT)

実際の選定事例

事例1:製造業の技術サポート → RAGを選択

課題 製品マニュアルが頻繁に更新され、問い合わせ対応に時間がかかる
選択理由 マニュアル更新のたびに再学習するのは非現実的
結果 RAGで構築し、マニュアル更新時はDBを更新するだけで対応

事例2:法律事務所の契約書レビュー → ファインチューニングを選択

課題 法律用語の正確な理解と、事務所独自のレビュー基準の反映
選択理由 専門用語と独自ルールをモデルに学習させる必要あり
結果 過去の契約書レビュー事例でファインチューニング

事例3:金融機関のコンプライアンス対応 → ハイブリッドを選択

課題 金融専門用語の理解+最新の法規制への対応
選択理由 専門性と情報鮮度の両方が必要
結果 金融用語でファインチューニング後、RAGで最新規制情報を参照

よくある質問

Q1: ファインチューニングすれば、RAGは不要になる?

A: いいえ。ファインチューニングは「知識の更新」が苦手です。学習時点の情報は持っていますが、その後の変更には対応できません。最新情報を扱う必要があるなら、RAGとの併用が推奨されます。

Q2: RAGだけで専門用語に対応できない?

A: 限界があります。RAGは関連ドキュメントを検索して参照させますが、モデル自体が専門用語を「理解」しているわけではありません。専門用語が多い場合は、ファインチューニングとの併用を検討してください。

Q3: 予算が限られている場合、どちらを選ぶべき?

A: まずRAGから始めることを推奨します。RAGは初期コストが低く、導入も早い。効果を検証してから、必要に応じてファインチューニングを追加する段階的アプローチが安全です。

Q4: GPT-4をファインチューニングする意味はある?

A: ケースバイケースです。興味深いことに、GPT-3.5をファインチューニングしてGPT-4を超えるパフォーマンスを達成した事例もあります。コストを抑えながら高品質な出力を得たい場合、ファインチューニングは有効な選択肢です。

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本記事で解説したように、RAGとファインチューニングの選択は、課題の性質によって大きく異なります。

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まとめ:RAG vs ファインチューニングの選び方

本記事のポイントをまとめます。

☑️ RAG:外部DBから検索して回答。知識更新が容易、コスト低、導入早い

☑️ ファインチューニング:モデルに知識を焼き付ける。専門用語・文体統一に強い

☑️ 多くのビジネスユースケースではRAGが最適(Microsoft検証でも優位性確認)

☑️ 専門用語が多い・文体統一が必要ならファインチューニングを検討

☑️ 両方必要ならハイブリッドアプローチ(RAFT)

☑️ 迷ったらRAGから始めて、必要に応じてファインチューニングを追加

RAGとファインチューニングは、どちらが優れているという問題ではなく、課題に応じて適切に選択するものです。

本記事の判断基準を参考に、あなたの課題に最適な手法を選んでください。そして、迷った時は専門家に相談することをおすすめします。

なお、最新のトレンドとして、Claude Codeの開発チームはRAGの代わりに「Agentic Search」という新しいアプローチを採用しています。RAGの限界と次世代の検索手法について知りたい方は「Claude Codeが「RAGを捨てた」理由|Agentic Searchの全貌」もあわせてお読みください。

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