AIエージェント

AIエージェント vs RPA徹底比較|違い・使い分け・導入判断のポイントを解説

2025年12月16日 8分で読める AQUA合同会社
AIエージェント vs RPA徹底比較|違い・使い分け・導入判断のポイントを解説

「RPAはオワコン」——そう言い切る専門家がいる一方で、「RPAは死なない。AIと組み合わせることでより強力になる」という見方もあります。

2025年は「AIエージェント元年」と呼ばれ、従来のRPAでは対応できなかった非定型業務の自動化が可能になりつつあります。しかし、だからといってRPAが不要になるわけではありません。両者には明確な「得意分野」の違いがあります。

本記事では、AIエージェントとRPAの違いから使い分けの基準、そして次世代のインテリジェントオートメーションまで、業務自動化の最前線を解説します。

AIエージェントとRPAの基本的な違い

まずは、それぞれの技術の定義と特徴を整理しましょう。

RPA(Robotic Process Automation)とは

RPAは「決められた作業を正確に繰り返すソフトウェアロボット」です。

  • 人間がPC上で行う定型作業をそのまま自動化
  • あらかじめ設定されたルール・手順に従って動作
  • データ入力、転記、ファイル操作などが得意
  • 24時間365日、ミスなく作業を継続

例えるなら:「マニュアル通りに完璧に作業する事務スタッフ」

AIエージェントとは

AIエージェントは「自ら考え、判断し、行動する自律型AI」です。

  • 自然言語で指示を受け取り、タスクを遂行
  • 状況を判断し、最適な方法を自ら選択
  • 複数のツール・システムを横断して処理
  • 予期せぬ事態にも柔軟に対応

例えるなら:「目的を伝えると自分で考えて動く部下」

一言で表す違い

RPA = 「作業の自動化

AIエージェント = 「業務の自律化


AIエージェント vs RPA:詳細比較表

両者の違いを項目別に比較します。

比較項目 RPA AIエージェント
動作原理 ルールベース・スクリプト LLMによる自律的推論
対応業務 定型業務のみ 定型・非定型業務
指示方法 プログラム・フローチャート 自然言語(話し言葉)
判断能力 なし(分岐はルール内のみ) あり(状況に応じて判断)
例外処理 停止・エラー 自ら対処を試みる
学習能力 なし 継続的に学習・改善
外部連携 限定的(API連携が必要) 多数のツールを自律利用
メンテナンス UI変更のたびに修正が必要 自然言語で調整可能
導入難易度 比較的低い 中〜高(設計が重要)
費用感 月額数万〜数十万円 従量課金 or 50〜200万円

具体例で理解する:同じ業務への対応の違い

例1:受注メールの処理

RPAの場合

  1. 特定フォーマットのメールのみ処理可能
  2. 決まった位置から注文情報を抽出
  3. フォーマットが違うとエラーで停止
  4. 例外は人間が手動で対応

AIエージェントの場合

  1. 様々なフォーマットのメールを理解
  2. 文脈から注文情報を正確に抽出
  3. 不明点があれば顧客に確認メールを送信
  4. 例外ケースも自ら判断して処理

例2:経費精算のチェック

RPAの場合

  • 金額の上限チェック → OK/NG判定
  • 必須項目の入力チェック → OK/NG判定
  • ルール外の判断はできない

AIエージェントの場合

  • 領収書の内容を画像認識で確認
  • 出張の目的と経費の妥当性を判断
  • 過去の承認パターンを学習して判断
  • 疑わしいケースは担当者に確認

RPAの限界:なぜAIエージェントが注目されるのか

RPAは多くの企業で導入されていますが、以下のような限界が指摘されています。

限界1:定型業務にしか対応できない

RPAは「決められた手順」でしか動けません。少しでも例外があると停止してしまいます。

  • メールの文面が想定と違う → エラー
  • Webサイトのレイアウトが変わった → エラー
  • 入力データに想定外の値がある → エラー

限界2:メンテナンスコストが高い

システムのUI変更やバージョンアップのたびに、RPAのシナリオ修正が必要です。

現場の声:「RPAの維持管理に専任担当者が必要になり、当初想定していたROIが出ていない」

限界3:複雑な判断ができない

「この案件は急ぎだから優先して」「この顧客には特別対応で」といった文脈を読んだ判断ができません。

限界4:連携できるシステムが限られる

RPAは基本的に「画面操作の自動化」です。APIがないシステムや、セキュリティ制限のあるシステムとの連携は困難です。

業界の見方

専門家の予測:「RPAで対応していた業務シナリオのうち、約5割はAIエージェントに置き換わる可能性がある」

AIエージェントの課題:万能ではない理由

一方で、AIエージェントにも現時点では課題があります。

課題1:AIの誤判断リスク

ChatGPT、Claude、Geminiなど主要な生成AIサービスは、公式に「誤情報を含む可能性がある」「結果の正確性を保証できない」と明記しています。

対策:重要な判断は人間が最終確認する仕組みを組み込む

課題2:ブラックボックス化

AIエージェントがなぜその判断をしたのか、内部のプロセスが見えにくい場合があります。監査やコンプライアンスの観点で問題になる可能性があります。

対策:判断理由のログを残す設計にする

課題3:コストの予測が難しい

従量課金制の場合、利用量によってコストが変動します。想定以上に処理が発生するとコストが膨らむリスクがあります。

対策:上限設定やモニタリングの仕組みを導入

課題4:導入設計の難易度

RPAは「手順を記録すれば動く」シンプルさがありますが、AIエージェントは「どこまで自律させるか」「どんな権限を与えるか」といった設計が重要になります。


使い分けの基準:どちらを選ぶべきか

RPAとAIエージェント、それぞれに適した業務を整理します。

RPAが適している業務

業務タイプ 具体例
大量の定型処理 請求書の転記、勤怠データの集計
ルールが明確な業務 与信チェック、在庫アラート
高い正確性が必要 金融取引、法定帳票の作成
UI操作の自動化 レガシーシステムへの入力

AIエージェントが適している業務

業務タイプ 具体例
非定型な判断が必要 問い合わせ対応、提案書作成
文脈理解が必要 メール分類、契約書レビュー
複数システムの横断 情報収集、レポート作成
例外が多い業務 クレーム対応、調達業務

判断フローチャート

Q1. その業務はルールが明確で、例外がほぼないですか?

→ Yes → RPAが適している

→ No → Q2へ

Q2. 状況に応じた判断や、文脈の理解が必要ですか?

→ Yes → AIエージェントが適している

→ No → RPAで十分

Q3. 100%の正確性が法的に要求されますか?

→ Yes → RPA(または人間のチェック必須)

→ No → AIエージェントも選択肢


最適解は「共創」:インテリジェントオートメーション

実は、RPAとAIエージェントは「競合」ではなく「共創」の関係にあります。両者を組み合わせたインテリジェントオートメーション(IA)が、次世代の業務自動化の主流になりつつあります。

インテリジェントオートメーションとは

AIの「脳(判断力)」とRPAの「手(実行力)」を組み合わせ、業務プロセス全体を自動化する仕組みです。

AIエージェント(判断・計画)

RPA(正確な実行)

人間(最終確認・例外対応)

連携活用の具体例

例1:問い合わせ対応の自動化

  1. AIエージェント:問い合わせ内容を分析・分類
  2. AIエージェント:回答案を生成
  3. RPA:CRMへの記録、関連データの取得
  4. AIエージェント:最終回答を作成・送信

例2:請求書処理の自動化

  1. AI-OCR:請求書の画像から情報を抽出
  2. AIエージェント:内容の妥当性を判断
  3. RPA:会計システムへ正確にデータ入力
  4. RPA:承認ワークフローを起動

導入企業の事例:AT&T

通信大手AT&Tは、RPAとAIを組み合わせたインテリジェントオートメーションを大規模に展開しています。

  • 現在約3,000のボットが稼働中
  • 毎月約75個のボットを追加
  • 既存ボットの約30%がAIでアップグレード可能

費用比較:RPA vs AIエージェント

RPAの費用相場

タイプ 費用相場 特徴
デスクトップ型 月額数万円〜 1台のPCで動作、小規模向け
サーバー型 月額数十万円〜 複数ボット管理、中〜大規模向け
クラウド型 月額10万円〜 初期費用を抑えられる

AIエージェントの費用相場

タイプ 費用相場 特徴
SaaS型 従量課金(月額数万円〜) 初期費用0円、スモールスタート可能
カスタム開発 50万〜200万円 自社業務に最適化
エンタープライズ 300万円〜 大規模・高セキュリティ対応

費用対効果の考え方

  • RPA:導入コストが読みやすい。大量の定型業務があれば高いROI
  • AIエージェント:非定型業務の自動化で、これまで人件費がかかっていた業務を削減可能
  • 組み合わせ:初期はRPAで基盤を作り、段階的にAI連携へ拡張するアプローチが効率的

導入を検討する際のステップ

ステップ1:業務の棚卸し

  • 自動化したい業務をリストアップ
  • 定型/非定型、判断の有無で分類
  • 現状の工数・コストを把握

ステップ2:適切な技術の選定

  • 業務特性に応じてRPA/AIエージェント/両方を選択
  • 既存システムとの連携可否を確認
  • セキュリティ・コンプライアンス要件を整理

ステップ3:小規模なPoCから開始

  • 1〜2業務で効果を検証
  • 課題を洗い出し、改善
  • 成功パターンを横展開

ステップ4:段階的に拡大

  • RPAで基盤を構築
  • AI-OCR、AIエージェントを順次追加
  • インテリジェントオートメーションへ進化

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まとめ:RPAとAIエージェントは共存の時代へ

本記事のポイントをまとめます:

☑️ RPA = 定型業務の「自動化」、AIエージェント = 非定型業務の「自律化」

☑️ RPAの限界:例外処理ができない、メンテナンスコストが高い

☑️ AIエージェントの課題:誤判断リスク、ブラックボックス化

☑️ 約5割のRPA業務がAIエージェントに置き換わる可能性

☑️ 最適解は「共創」:インテリジェントオートメーション

☑️ 「RPAで基盤構築 → 段階的にAI連携」が成功パターン

「RPAかAIエージェントか」という二者択一ではなく、両者の強みを活かした組み合わせが、これからの業務自動化の主流になります。

まずは自社の業務を棚卸しし、どの領域でどの技術を活用するかを整理することから始めてみてください。専門家への相談も、効率的な導入への近道です。

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